2026.08.07

国際大会報告

審判報告

World Aquatics Diving World Cup Super Final Beijing 2026 審判報告及び大会リポート

執筆者:中川真衣(国際審判)

<概要>
■期間  5月1日~3日
■参加国 17カ国
■選手数 91人
■ジャッジ17人(レフェリーとアシスタントレフェリー含む)

<ジャッジミーティング内容>

  1. 採点の即時性とレフェリーとの連携
  • 迷わず入力する: 演技が終わったら、ほかの審判やレフェリーの結果を待たず、自分の見たままを即座に採点すること。
  • 失敗(Failed Dive)の判断: たとえ失敗だと思っても(0点をつける場合でも)、即座に入力することが重要。それがレフェリーの判断を助けることにも繋がる。
  1. ジャッジの心構えと準備
  • 「見たままを裁く」: 大会の最初だろうが最後だろうが、目の前の演技に集中すること。
  • 事前練習の観察: 審判も大会前に練習を見て「目を慣らす」ことが推奨される。ただし、練習での癖に引きずられず、本番の演技を客観的に見ることが重要。
  • 1本目の重要性: 大会の1本目はその後の基準(スタンダード)になるため、非常に重要。最高の結果なら10点(Excellent)を出すのをためらってはいけない。
  1. シンクロとチームイベントの採点
  • 同調性(Synchronization)の評価: シンクロでは同調性が最優先だが、入水角度(垂直性)などの個別要素も「1/2〜2点」の範囲で減点対象となる。
  • 過度な減点の抑制: 同調性が素晴らしいのに、一つの要素が悪いだけで極端に低い点をつける(カテゴリーを下げすぎる)べきではないという意見が出された。
  • 位置のズレ: 踏切の位置が左右にズレている場合も、審判の印象に基づき減点対象となる。
  1. 具体的な技術要素への議論
  • 逆立ちからの飛び込み: 逆立ちでバランスを崩しても、その後の演技で立て直した場合は、それを評価し「1つの要素のミス」として扱うべき。ミスに執着しすぎて演技全体を「殺して(評価を下げすぎて)」はいけない。
  • パイク姿勢(B)の定義: ルール上、複数の宙返りを行う際は「B(パイク)」と記載されるが、実際には「オープンパイク」になることが多い。一瞬でもパイクの形が見えれば、ルール上Bとして認められるという解釈。
  • 水しぶき: 新しいルールでは「最小限の水しぶき(Minimal splash)」という文言が明文化されており、入水のクリーンさがより重視されている。
  1. 審判の主観性と「同じ言語」での対話
  • 審判の個性と一貫性: 審判によって好みのスタイルや視点(角度)は異なる。美しさは「見る人の目」に依存するため、完全に機械的な採点は不可能。
  • 対話の重要性: 審判同士が議論し、基準をすり合わせることで「同じ言語」を話せるようになることが、公平な採点に繋がる。
    以上が今大会のジャッジミーティングで議論された内容である。

<大会リポート>
本大会は5月1日から3日までの期間で開催され、参加国17カ国、選手数91人、そしてレフェリーおよびアシスタントレフェリーを含む計17人のジャッジが招集された。

大会期間中に行われたジャッジミーティングでは、演技終了後に他者の結果を待つことなく自身の判断で即座に入力を行うといった「採点の即時性」や、失敗(0点)と判断される場合でも迅速に入力してレフェリーの最終判断を助ける連携体制、さらには事前練習での印象に引きずられず本番の演技を客観的に評価する重要性や、大会の基準となる1本目で10点(Excellent)を出すことを躊躇しない姿勢といった、審判員としての基本的な心構えと準備についてあらためて確認がなされた。

また、具体的な採点基準や技術要素の議論においては、シンクロ種目で同調性を最優先としつつも個別要素を適切に減点するルールや過度な減点を抑制する方針、踏切の左右のズレへの対応に加え、逆立ち飛び込みでバランスを崩した際のミスの扱い、複数回宙返り時におけるパイク姿勢(B)の定義の明確化、そして新規則で明文化された「最小限の水しぶき(Minimal splash)」に伴う入水のクリーンさの重視など、実戦に即した多角的なルール解釈についての検討が行われた。最終的には、各審判員が持つ個性や視点の違いによる主観性を認めつつも、審判員同士が継続的に対話と議論を重ねて評価基準のすり合わせを行うことで、審判団として「同じ言語」を共有し、大会全体を通じて極めて公平かつ一貫性の高い採点体制を確立することが図られた。

<最後に>
World Aquaticsから招聘を受けたときは、国際審判員としての経験が浅いこともあり、驚きとともに不安を抱いていた。しかし、現地では他国のジャッジらが快く受け入れてくれたため、審判業務以外の時間も含め、非常に有意義で充実した時間を過ごすことができた。

初日のミーティングにおいて、TDC(技術委員会)からは「ジャッジを務める際は、一度自国の国旗を外し、ジャッジとしてのチームを最優先すること」、そして「質の高い審判業務を遂行するため、積極的に意見を出し合いコミュニケーションを図ること」が強く求められた。この方針に対し、私自身は共通言語である英語力の不足を痛感しており、今後はジャッジのスキル向上はもちろんのこと、語学力の強化にも並行して取り組む必要があると感じている。

また、今回の派遣では、世界情勢の影響により第2戦目のメキシコ大会が中止になるという、コロナ禍以降初となる突発的なキャンセルも経験した。この事態を通じ、我々がスポーツを享受できるのは世界の平和があってこそであるとあらためて強く実感しており、今後も世界のトップステージにおいてジャッジとして指名されるよう、より一層の精進を重ねていきたい。

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