2026.09.03

国際大会報告

パンパシフィック選手権 OWS競技報告

執筆者:OWS日本代表コーチ 清水 咲子

競技結果
【男子10km】出場者25人
順位 氏名 時間 トップとの差
8位 辻森 魁人 1時間50分10秒 19秒
11位 田渕 海斗 1時間52分33秒 2分42秒
‐ 江沢  陸 1時間53分06秒 3分15秒
‐ 南出 大伸 1時間54分38秒 4分47秒

※各国上位2人までが正式順位となるため2人はランキング対象外

【女子10km】出場者22人
順位 氏名 時間 トップとの差
2位 蝦名 愛梨 1時間55分59秒 26秒
3位 梶本 一花 1時間56分07秒 34秒

<男子レース>
男子10kmは10時30分、気温32℃、水温24℃のコンディションでスタートした。

レースは、ヨーロッパから参戦したフロリアン・ウェルブロック(ドイツ)を中心に展開された。全体としてはややスローペースで進み、日本選手も8位から13位付近の先頭集団内に位置しながら、4周目までは約10人が互いに牽制し合う展開となった。

しかし、男子OWSで勝負を左右するラスト2周に入り、一気にペースが引き上げられると、その動きに対応できた日本選手は辻森魁人のみであった。選手自身が「スローペースである」と認識できていたのであれば、参加人数が比較的少ない今大会だからこそ、自ら先頭に出てレースを動かす、あるいは世界トップレベルのウェルブロックと並んで泳ぎ、その動きやスピードを体感するなど、より積極的なレースへの関与が必要であった。単に集団の中で展開を待つのではなく、自らレースをつくり、世界のトップ選手と勝負する経験を意図的に獲得することが、五輪へつながる重要なプロセスとなる。

この点については、これまでも男子選手に求めてきた課題であり、今大会においても改善しきれなかった大きな課題として残った。

<女子レース>
女子10kmは12時30分、気温33℃、水温25℃でスタートした。

序盤から蝦名愛梨が世界チャンピオンであるモエシャ・ジョンソン(オーストラリア)の前に出て先頭を引っ張り、積極的にレースを展開した。3周目以降は先頭を譲る形となったものの、世界トップ選手を相手に自らレースを動かす姿勢を示すことができた。また、周回を重ねるごとに梶本が着実に順位を上げ、終盤はオーストラリア2人、日本2人によるメダル争いとなった。

最後の勝負では、オーストラリア勢がさらにギアを一段、二段と引き上げる強烈なラストスパートを見せたものの、日本勢も最後まで食らいつき、銀メダル、銅メダルという歴史的な2つのメダルを獲得することができた。これは、日本女子OWSが世界のメダル争いを現実的に戦える位置まで到達していることを示す大きな成果であった。

一方で、不動の世界チャンピオンであるジョンソンとの差は約30秒であった。泳力そのものに決定的な差があるわけではない中で、OWS特有の終盤の駆け引き、ポジショニング、そしてラスト2周からのスピード変化において、依然として世界トップとの差が存在している。

これまで何度も課題としてきたこの「約30秒」を、今回も埋め切ることはできなかった。

<今後に向けて>
今大会を通して、男子と女子では今後取り組むべき課題がより明確になった。

男子については、まず世界大会で常に入賞圏内を狙うという意識を、日々のトレーニングから持ち続けることが必要である。そのうえで、レースでは集団の動きを待つのではなく、自ら前に出て展開をつくり、世界トップ選手と直接勝負する姿勢を身につけなければならない。トレーニングで培った泳力を、国際大会の中で「勝負する力」へと変換していくことが、男子チームの次の大きなテーマである。

一方、女子については、世界トップ選手と比較しても基礎的な泳力に大きな差はなく、メダルを争える位置まで競技力は高まっている。だからこそ今後は、OWSにおけるラスト2周の圧倒的なスピード変化への対応力を最重要課題として強化していく必要がある。単純な泳速度だけではなく、疲労した状態からギアを切り替える能力、ポジショニングやライン取りなどの技術、勝負どころで躊躇なく仕掛けるメンタリティを含めた総合的な競技力の向上が求められる。

また、持久力を高めることでスピードが低下する、あるいはスピードを強化することで持久力や技術面が損なわれるといった、一つの要素を強化することで別の要素が低下する状況を打破し、すべての要素を高い水準で両立させていくことが、世界で勝つためには必要である。そのためには、選手だけでなくコーチ陣も世界のレースやトレーニング方法を継続的に学び、新たな知識や技術を習得し続ける習慣を持たなければならない。個々の選手を強化するだけではなく、コーチ、スタッフを含めたチーム全体が常にアップデートを重ね、世界大会で勝つための準備を総合的に進めていくことが今後の重要な課題である。

今大会で得た成果と課題を次のトレーニングへ明確に落とし込み、来年の世界選手権、そしてオリンピックへ向けて、自己課題とチーム課題を見失わずに取り組んでいく。

バックナンバーはこちら