その他報告
第38回日本水泳ドクター会議総会・第28回水と健康医学研究会の開催報告
執筆者:日本水泳ドクター会議 事務局長 辰村正紀
開催概要
【日 時】2026年5月30日(土)13:30〜18:05
【会 場】名古屋大学医学部鶴舞キャンパス 医系1号館地下1階会議室
(愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65)
【主 催】日本水泳ドクター会議
【参加者数】約90人(ドクター会議会員、トレーナー会議会員、医学・薬学生等)
はじめに
水泳医学・スポーツ科学の最前線が名古屋に集結した。2026年5月30日(土)、名古屋大学医学部鶴舞キャンパスを舞台に、「第38回日本水泳ドクター会議総会」および「第28回水と健康医学研究会」が盛大に開催された。
日本水泳ドクター会議は、公益財団法人日本水泳連盟医事委員会の連携組織として、水泳・水中運動と医学の融合を長年にわたり推進してきた。競技会救護からドーピングコントロール、選手の健康管理、学術研究まで幅広く活動し、わが国の水泳界を医学の視点から支えている組織だ。そのドクター会議が日本水泳トレーナー会議とともに年一度開催するこの研究会は、実践的な知見と最新の科学的エビデンスが交差する貴重な学術の場となっている。
今回は医師・トレーナー・研究者・学生を含む約90人が参加。長引く午後の熱気の中、一般演題8題と特別講演2題が繰り広げられ、競泳からアーティスティックスイミングまで、幅広い競技種目を横断した活発な議論が展開された。
第38回日本水泳ドクター会議総会(ドクター会議会員のみ)
13:30より、まずドクター会議会員を対象とした総会が開催された。今年度の事業報告・計画、会務運営に関する議題が審議され、会の運営基盤のさらなる強化が確認された。前会長・岡崎哲和から新会長・水谷和郎氏への引き継ぎが行われ、水谷新会長のもと、組織としての方向性が示された。
第28回水と健康医学研究会(ドクター会議・トレーナー会員)
14:30から始まった研究会の一般演題では、現場のリアルな課題に根ざした研究発表が相次いだ。
一般演題1(座長:辰村正紀)
(1) 廣澤暁氏は、競泳選手の筋骨格系障害について後ろ向き記述疫学研究の手法で発症様式と受傷部位の実態を報告。
(2)伊藤裕希氏は、複数回の外傷・障害を発症したアーティスティックスイミング選手の特徴を分析し、再受傷リスクの高い選手像を明らかにした。
(3)三富陽輔氏は、オリンピック競泳メダリストのコンディショニングを独自の視点で分析し、世界トップの秘訣に迫る報告を行った。
(4)谷祐輔氏は、競泳選手における腱板徒手テストの所見と肩関節痛の関連を、疼痛・既往・無症状の3群で比較検討し、スクリーニングの有用性を示した。
一般演題2(座長:杉山純也)
(5)森島悠貴氏は、新設した医療系学生向け競技会の取り組みを報告し、次世代の水泳ドクター・トレーナーをどう育成・誘致するかという展望を示した。未来を担う人材の裾野を広げる取り組みとして注目を集めた。
(6)笹川夢帆氏は、アーティスティックスイミング選手のアクロバティック動作に関連した受傷部位の実態を調査し、独特の身体動作が生む障害パターンを解明した。
(7)新井雄士氏は、ウォーミングアップにおけるドライランドトレーニングの有用性を検証。水中練習前の陸上トレーニングの効果を実証的に示した。
(8)石垣佳織氏は、ジュニアブロックのシンガポール遠征に帯同した際の医事活動を詳細に報告し、国際大会サポートの実際を共有した。
特別講演1(座長:坂口健史)
演題:「競泳指導におけるパラダイムシフト:豪州の科学的思想に基づくコンディショニングと現場での実践」
登壇者:佐々木祐一郎氏(中京大学 体育会水泳部 監督)
17:15から行われた特別講演1では、中京大学水泳部監督の佐々木祐一郎氏が、オーストラリアにおける水泳科学の思想と指導哲学を紹介。「練習量こそ正義」という従来の競泳指導の常識を見直し、科学的根拠に基づいたコンディショニングの重要性を力説した。豪州の先進的なアプローチを日本の現場にどう落とし込むかという具体的な実践例も交え、会場から多くの質問が飛んだ。
特別講演2(座長:平野貢)
演題:「トップスイマーの身体は何を感じているのか?― オリンピック経験から読み解く疲労・障害・パフォーマンス ―」
登壇者:林享氏(東海学園大学 スポーツ健康科学部 教授)
特別講演2では、東海学園大学の林享教授が、自身のオリンピック経験をもとに、トップスイマーが競技を通じて経験する疲労・障害・パフォーマンスの本質に迫った。アスリートの身体感覚という主観的な側面に科学的な光を当てたユニークな視点は、参加者から高い関心を集め、「選手の声をどう医学的実践に活かすか」という議論に発展した。
懇親会・ネットワーキング
18:05の閉会の挨拶・写真撮影に続き、19:00からは全体懇親会が催された。医師・トレーナー・研究者・学生が垣根を越えて交流し、演題への意見交換や今後の共同研究に向けた対話が盛んに行われた。こうした場でこそ生まれる「現場を超えた連携」が、日本の水泳医科学のさらなる発展を支えている。
まとめ:来年もこの場で会いましょう
競泳からアーティスティックスイミング、ジュニアからオリンピアンまで。今回の研究会は、水泳医科学のすそ野の広さと奥深さを改めて実感させてくれる場となった。
豪州の科学的指導哲学、オリンピアンが語る身体感覚、そして実践的な疫学研究——。これらの知見が一堂に会し、参加者それぞれの「現場」へと持ち帰られていく。それこそが、この研究会が長年にわたって積み上げてきた価値そのものではないだろうか。
水泳と医学の交差点で、真剣に競技者の身体と向き合うすべての人に。来年の開催地でまた、この熱量を共に体験しよう。
謝辞:本会は多くの善意と協力のもとで運営されている。文末にはなるが、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げる。

【主催団体】日本水泳ドクター会議・日本水泳トレーナー会議
公益財団法人 日本水泳連盟 医事委員会連携組織
ウェブサイト:https://www.swim-medical.jp
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